ニホンザル 【 日本猿 】 



長野県北安曇郡白馬村 小蓮華山の手前 2021年8月20日・撮影


話には聞いていたが、北アルプスの稜線近くまでニホンザルが登ってきているのを目の当たりにして、少々驚いた。
群れは少なくても10頭以上はいた。中には子供をおんぶしているのもいた。可愛らしい微笑ましい光景にも見えるが、近くにはライチョウもいた。深刻な事態になっていることは事実だ。
試しに、「バーン」と大声を出して脅かしてみたら、とっさに反応して逃げ、遠のいた。一応ヒトを警戒し、恐れてはいるようだ。だが、しばらくしたら、またハイマツの実や草の芽のようなものをしきりに食べていた。
この高山にまで登ってきた群れは、多分麓での生存競争に負けて、ここまで登って来ざるを得なかったのだろうが、いや、未知も無知も恐れない開拓者精神が旺盛で、進取の精神に富んだグループなのかもしれない。彼らはまだ、同じ仲間が北限のサルとして、極寒の青森県下北半島に住んでいることを知らない。
彼らはいったいどこへ行こうとしているのだろう。まさか、北アルプスを越えて日本海を目指しているのではないだろうな。あふれんばかりの海の幸に恵まれた日本海へ…。
栂海(つがみ)新道を北上すれば、『脱獄山脈』の一刀猛の足でわずか2日だ。狂ってしまった自然の摂理の中で生存をかけて移動するニホンザルにとっては、いったい何年を要するのだろう。いや、地球規模での緊急事態が迫っているのだから、それほど長い年月は要さないだろう。進化はある時、一気に進むのだという。
親不知子不知の雪国の海岸は、歴史的なニホンザルの一群を待っているのだろうか。中部横断自動車道はやっと開通したが、ニホンザルが日本列島の横断に成功しないことを願うばかりだ。『猿の惑星』にならないためにも…。
(8月31日更新)



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