今年の夏も白馬岳に登った。 だが、今年の白馬岳はちょっと様子が違った。7月4日から、大雪渓ルートが通行止めになったのだ。 まだ夏山シーズン開始前だというのに、クレバスが多く、雪渓が崩壊しているため、登山道が確保できないのだそうだ。通行止めは、近年では、落石遭難があった2005年の夏と去年(8月27日15:00〜)以外は聞いたことがない。 今年は、5月には3号雪渓(大雪渓からの左岸・北側に枝分かれしている雪渓)で、かなり大きな岩盤崩落があり、大雪渓に約900mに渡って土砂や岩石が流れ落ちた。そんなこともあって、安全を優先した措置なのだろう。 白馬大雪渓に入れないとなれば、山小屋や観光業者にとっては、やっとコロナ禍が通り過ぎたのに、かなりの痛手だろう。登山者も、白馬岳に登るためには栂池高原から入って小蓮華山を経由するか、猿倉から鑓温泉ルートをとって白馬鑓ヶ岳を越えて行くしかない。 オイラの場合は、もはや大雪渓を登るのは体力的に無理だから、毎年栂池からゴンドラリフトとロープウェイに乗って登るのだから、まあ、同じことなのだが、大雪渓を帰りの下山ルートやエスケープルートとして利用できないのは、かなり痛い。 まあ、そんなわけで、普通の人なら1日で歩く行程を2日かけて歩き、最軽量のツエルト泊まりのつもりだが、天候が悪くなったらいつでも小屋泊まりに切り替える気楽さで、まあなんとかなるだろうと、見境もなく、実はアブナイ・ヤバイ“後期高齢者単独縦走登山”に出掛けたわけ…。
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灌木帯を登り、小さな雪渓を渡り、再び巨岩がゴロゴロした岩塊斜面を登ると、ふいに白馬乗鞍岳の稜線に出る。視界がぱっと開け、森林限界を越えたことが分かる。 右側にこの遭難慰霊碑がある。この巨岩も火山の噴火で出てきた安山岩だろう。 ここまで登ると、白馬乗鞍岳までは平らで、それほどの距離もないので、ホッとする。 |
国土地理院によれば、(白馬)乗鞍岳の標高は2469mとされている。ただし、二等三角点は、この大ケルンより200mほど手前にあり、2436.4mで低くなっている。 では、乗鞍岳の最高地点はこのケルンの場所かというと、どうもそうではなさそうだ。周りを見回すと、ほぼ平坦な地形だが、左すなわち南に明らかにここより高い場所があり、2万5千分の1の地図でも確認できる。等高線は2450〜2460mの間になっている。(最近の2万5千分の1の地図には、ちゃんと標高2456mと書かれていました。いまだ昭和58年発行の地図を見てましたので。笑。)でも、標高2469mには及ばないから、ここも最高地点ではないことになる。 ああ、いったい乗鞍岳の頂上はどこなのだ? 乗鞍岳が消えたのか? 山が消えたー! まあ、そんなことはない。(いや、ある。) 2万5千分の1の地図をじっと見ていると、大ケルンからなんと700mほども離れた白馬大池の北側の新潟県との県境上に、小高い岩だらけの山がある。ここにしっかり「2469」の標高が書かれている。(たぶんここだな!) ここを乗鞍岳とは明記してないが、ここが(白馬)乗鞍岳の最高地点、すなわち頂上ということなのだろう。 登山道から外れているし、山腹は巨岩がゴロゴロしているから、登ることはできないだろうと思うが、何とも紛らわしいことになっている。(下の写真A参照) |
池の畔にある巨岩も、火山の噴火で出てきた溶岩が固まってできた安山岩だと思う。 この辺には、大昔、白馬大池火山という火山があって、かなり活発に活動していたらしい。現在、火山の山体ははっきりとは残っていないそうだが、周辺にはそれらしい痕跡がたくさんあるそうだ。 ただし、白馬大池は、火山の火口に水が貯まったとか、火口が陥没してカルデラ湖になったというミステリアスな物語はなく、噴火で流れ出た火山噴出物によって水が堰き止められてできた「堰止め湖」だそうだ。 現在の白馬大池は、水面標高が2379m、面積0.06km2、水深13.5m、北アルプスでは2番目に大きい湖だそうだ。ちなみに1番は、ここから北東に5kmほどの風吹(かざふき)大池だそうだ。こちらは歴としたカルデラ湖だそうだ。 |
地質図譜を見ると、小蓮華山の頂上付近の岩石は、花崗岩と閃緑岩の中間的な性質の「花崗閃緑岩」(深成岩)であると示されているが、どうもよく分からない…。写真に写っている頂上は崩壊が進んでいるため、立ち入り禁止で、ロープが張られている。 |
写真のように、2つの稜線が平行して並ぶ地形を「二重山稜」という。 かつて、我々が若者だった頃には「二重稜線」と言っていた。もっと昔は、「舟窪」(ふなくぼ)と呼んでいたらしい。 最近は、そのでき方や窪地のほうに着目して、「線上凹地」(せんじょうおうち)と呼ばれているようだが、どうもピンとこないし、違和感がある。 |
地質図では、白馬岳の頂上は、頁岩(けつがん シェール)と砂岩の交互層に覆われているように示されているが、この岩がそうなのだろうか? よく分からないが、多分そうだろうと思う。 頁岩とは泥岩が脱水・固結してできた堆積岩で、層状に割れやすく、黒っぽい色をしているという。 それにしても、白馬岳の岩石の種類はよくわからないなあ…。登山ガイドブックにもう少し書いてくれてあったら助かるのだが、ガイドブックも十年一日のごとしだしなあ。そうか、ガイドブックなんか持って行く人は、もういないのか…。 |
少なくても4頭を確認したが、もっといたと思う。猿に向かって写真を撮っていたら、岩場を走り回って威嚇された。正直いって怖かった。 3年前に小蓮華山付近で群れを見かけたが、遂にここまで分布を広げているのか。白馬村のほうから来たのなら、もう北アルプスの主稜線を越えたのである。清水岳を越えれば、あとは森の中だ。祖母谷(ばばだに)温泉はもうすぐだぞ! 君たちは第二の「温泉に入るサル」を目指しているのか? それとも黒部のトロッコ列車に乗ろうというのか? 健闘を祈る! でも、くれぐれも言っておくが、雷鳥にだけは絶対に手を出すなよ! あれは美味くねえぞ! いやすごく不味いぞ! あれは神の鳥だからな。そうだ、猿も神様の使いだったなあ…。 |