2024年・白馬岳夏山登山 7月21(日)〜28日(日) 7泊8日

今年の夏も白馬岳に登った。
だが、今年の白馬岳はちょっと様子が違った。7月4日から、大雪渓ルートが通行止めになったのだ。
まだ夏山シーズン開始前だというのに、クレバスが多く、雪渓が崩壊しているため、登山道が確保できないのだそうだ。通行止めは、近年では、落石遭難があった2005年の夏と去年(8月27日15:00〜)以外は聞いたことがない。
今年は、5月には3号雪渓(大雪渓からの左岸・北側に枝分かれしている雪渓)で、かなり大きな岩盤崩落があり、大雪渓に約900mに渡って土砂や岩石が流れ落ちた。そんなこともあって、安全を優先した措置なのだろう。
白馬大雪渓に入れないとなれば、山小屋や観光業者にとっては、やっとコロナ禍が通り過ぎたのに、かなりの痛手だろう。登山者も、白馬岳に登るためには栂池高原から入って小蓮華山を経由するか、猿倉から鑓温泉ルートをとって白馬鑓ヶ岳を越えて行くしかない。
オイラの場合は、もはや大雪渓を登るのは体力的に無理だから、毎年栂池からゴンドラリフトとロープウェイに乗って登るのだから、まあ、同じことなのだが、大雪渓を帰りの下山ルートやエスケープルートとして利用できないのは、かなり痛い。
まあ、そんなわけで、普通の人なら1日で歩く行程を2日かけて歩き、最軽量のツエルト泊まりのつもりだが、天候が悪くなったらいつでも小屋泊まりに切り替える気楽さで、まあなんとかなるだろうと、見境もなく、実はアブナイ・ヤバイ“後期高齢者単独縦走登山”に出掛けたわけ…。
 (2024年8月31日更新)



1日目 栂池高原〜白馬大池山荘テント場へ

栂池ヒュッテ、栂池山荘、栂池自然園ビジターセンター 
(右手前から)


長野県北安曇郡小谷村 栂池高原  2024年7月21日8:00・撮影

手前の栂池ヒュッテは、今年は営業していた。(去年は休業していた。)



天狗原 【 てんぐっぱら 】 (左は白馬乗鞍岳))


北安曇郡小谷村 千国  2024年7月21日・撮影



ヒオウギアヤメ 【 桧扇菖蒲 】


北安曇郡小谷村 千国 天狗原  2024年7月21日・撮影



天狗原 【 
地塘 ちとう 】 


北安曇郡小谷村 千国  2024年7月21日・撮影



白馬乗鞍岳への登り始め 【 安山岩の巨岩 】 


北安曇郡小谷村 千国  2024年7月21日・撮影

天狗原からは、しばらくは平らな木道を歩き、次にこの写真のような巨岩がゴロゴロした急坂の灌木帯を登る。



ミヤマタネツケバナ 【 深山種子漬花 】


北安曇郡小谷村 千国  2024年7月21日・撮影


岩塊斜面 【 がんかいしゃめん 】 安山岩


北安曇郡小谷村 千国  2024年7月21日・撮影


タカネイバラ 【 高嶺薔薇 】 


北安曇郡小谷村 千国  2024年7月21日・撮影


遭難慰霊碑 森林限界を越えた尾根


北安曇郡小谷村 千国  2024年7月21日・撮影


灌木帯を登り、小さな雪渓を渡り、再び巨岩がゴロゴロした岩塊斜面を登ると、ふいに白馬乗鞍岳の稜線に出る。視界がぱっと開け、森林限界を越えたことが分かる。
右側にこの遭難慰霊碑がある。この巨岩も火山の噴火で出てきた安山岩だろう。
ここまで登ると、白馬乗鞍岳までは平らで、それほどの距離もないので、ホッとする。
 


白馬乗鞍岳 【 はくばのりくらだけ 】 大ケルン


北安曇郡小谷村 2024年7月21日・撮影

写真の山岳標柱には、「白馬乗鞍岳2469m」と記されているが…?

国土地理院によれば、(白馬)乗鞍岳の標高は2469mとされている。ただし、二等三角点は、この大ケルンより200mほど手前にあり、2436.4mで低くなっている。
では、乗鞍岳の最高地点はこのケルンの場所かというと、どうもそうではなさそうだ。周りを見回すと、ほぼ平坦な地形だが、左すなわち南に明らかにここより高い場所があり、2万5千分の1の地図でも確認できる。等高線は2450〜2460mの間になっている。(最近の2万5千分の1の地図には、ちゃんと標高2456mと書かれていました。いまだ昭和58年発行の地図を見てましたので。笑。)でも、標高2469mには及ばないから、ここも最高地点ではないことになる。
ああ、いったい乗鞍岳の頂上はどこなのだ? 乗鞍岳が消えたのか? 山が消えたー!
まあ、そんなことはない。(いや、ある。)
2万5千分の1の地図をじっと見ていると、大ケルンからなんと700mほども離れた白馬大池の北側の新潟県との県境上に、小高い岩だらけの山がある。ここにしっかり「2469」の標高が書かれている。(たぶんここだな!) ここを乗鞍岳とは明記してないが、ここが(白馬)乗鞍岳の最高地点、すなわち頂上ということなのだろう。
登山道から外れているし、山腹は巨岩がゴロゴロしているから、登ることはできないだろうと思うが、何とも紛らわしいことになっている。(下の写真A参照)


白馬大池 【 はくばおおいけ 】  右が白馬大池山荘


長野県北安曇郡小谷村 2024年7月21日・撮影 

池の畔にある巨岩も、火山の噴火で出てきた溶岩が固まってできた安山岩だと思う。
この辺には、大昔、白馬大池火山という火山があって、かなり活発に活動していたらしい。現在、火山の山体ははっきりとは残っていないそうだが、周辺にはそれらしい痕跡がたくさんあるそうだ。
ただし、白馬大池は、火山の火口に水が貯まったとか、火口が陥没してカルデラ湖になったというミステリアスな物語はなく、噴火で流れ出た火山噴出物によって水が堰き止められてできた「堰止め湖」だそうだ。
現在の白馬大池は、水面標高が2379m、面積0.06km2、水深13.5m、北アルプスでは2番目に大きい湖だそうだ。ちなみに1番は、ここから北東に5kmほどの風吹(かざふき)大池だそうだ。こちらは歴としたカルデラ湖だそうだ。
 



ハクサンイチゲ 【 白山一花 】 


長野県北安曇郡小谷村 白馬大池の畔 2024年7月21日・撮影 ()

*


2日目 白馬大池テント場〜白馬岳登頂〜白馬岳頂上宿舎テント場

本当の白馬乗鞍岳白馬大池 【 はくばのりくらだけ はくばおおいけ 】 頂上 2469m

写真A

長野県北安曇郡小谷村  2024年7月22日朝・撮影 

白馬大池山荘の後ろにある山が本当の白馬乗鞍岳で、ここが標高2469mの頂上(最高地点)だと思う。北峰とも呼ばれている。
山肌には大きな岩(安山岩)がゴロゴロしていて、夏場はとてもじゃないけど登れないように見える。


 【 にじ 】  雪倉岳 (ゆきくらだけ)


小谷村 雷鳥坂 2024年7月22日・撮影


ゴゼンタチバナ 【 御前橘 】


小谷村  2024年7月22日・撮影


ミヤマアズマギク
 【 深山東菊 】


小谷村  2024年7月22日・撮影


小蓮華山 【 これんげさん 】 頂上 2,769m


小谷村  2024年7月22日・撮影

花崗閃緑岩 【 かこうせんりょくがん 】 小蓮華山の頂上の岩石


小谷村  2024年7月22日・撮影

地質図譜を見ると、小蓮華山の頂上付近の岩石は、花崗岩と閃緑岩の中間的な性質の「花崗閃緑岩」(深成岩)であると示されているが、どうもよく分からない…。写真に写っている頂上は崩壊が進んでいるため、立ち入り禁止で、ロープが張られている。


岩石の境目 


白馬村 (小蓮華山から三国境までの中間地点の稜線) 2024年7月22日・撮影

(稜線のここだけ、赤茶けた岩石が露出している。いったいこれはなんなのだろう? 
岩石に含まれている鉄分が酸化したのだろうか?
真ん中の白い石は、去年も同じ所に転がっていたぞ。意外に動かないものなんだなあ。
だんだん定点観測写真になってきたなあ。)


二重山稜 【 にじゅうさんりょう 】 三国境と小蓮華山を振り返る


白馬村 馬の背付近から振り返る 2024年7月22日・撮影

写真のように、2つの稜線が平行して並ぶ地形を「二重山稜」という。
かつて、我々が若者だった頃には「二重稜線」と言っていた。もっと昔は、「舟窪」(ふなくぼ)と呼んでいたらしい。
最近は、そのでき方や窪地のほうに着目して、「線上凹地」(せんじょうおうち)と呼ばれているようだが、どうもピンとこないし、違和感がある。


ミヤマクワガタ 【 深山鍬形 】


白馬村 2024年7月22日・撮影



白馬岳 【  しろうまだけ 】 頂上 2,932m


長野県北安曇郡白馬村 2024年7月22日・撮影


白馬岳東側の崖 (岩石は珪長質凝灰岩か?)


長野県北安曇郡白馬村 2024年7月22日・撮影


白馬岳頂上の岩石 (頁岩・砂岩か?)


長野県北安曇郡白馬村 2024年7月22日・撮影


地質図では、白馬岳の頂上は、頁岩(けつがん シェール)と砂岩の交互層に覆われているように示されているが、この岩がそうなのだろうか? よく分からないが、多分そうだろうと思う。
頁岩とは泥岩が脱水・固結してできた堆積岩で、層状に割れやすく、黒っぽい色をしているという。
それにしても、白馬岳の岩石の種類はよくわからないなあ…。登山ガイドブックにもう少し書いてくれてあったら助かるのだが、ガイドブックも十年一日のごとしだしなあ。そうか、ガイドブックなんか持って行く人は、もういないのか…。
 

*

3日目 白馬岳頂上宿舎テント場〜清水岳ピストン


コバイケイソウ
 
【 小梅尅吹@】 (別名・コバイケイ)


富山県黒部市宇奈月町 2024年7月23日・撮影 奥は毛勝三山


コマクサ 【 駒草 】


富山県黒部市 2024年7月23日・撮影


ミヤマキンポウゲ 【 深山金鳳花 】


富山県黒部市 2024年7月23日・撮影


ハクサンイチゲ 【 白山一花 】 右奥の山は鹿島槍ヶ岳


富山県黒部市 2023年8月23日・撮影


裏旭岳 【  うらあさひだけ 】 2,733m


富山県黒部市 2023年7月23日・撮影 富山県側から振り返る。

この日、清水岳へのピストンで唯一出会った3人のパーティー。



ハクサンシャクナゲ 【 白山石楠花 】


富山県黒部市 2024年7月23日・撮影


ハクサンコザクラ
 【 白山小桜 】


富山県黒部市 2024年7月23日・撮影


清水岳直下 


富山県黒部市 2024年7月23日・撮影



ニホンザル
 【 日本猿 】 小旭岳付近


富山県黒部市 2024年7月23日・撮影

少なくても4頭を確認したが、もっといたと思う。猿に向かって写真を撮っていたら、岩場を走り回って威嚇された。正直いって怖かった。
3年前に小蓮華山付近で群れを見かけたが、遂にここまで分布を広げているのか。白馬村のほうから来たのなら、もう北アルプスの主稜線を越えたのである。清水岳を越えれば、あとは森の中だ。祖母谷(ばばだに)温泉はもうすぐだぞ! 君たちは第二の「温泉に入るサル」を目指しているのか? それとも黒部のトロッコ列車に乗ろうというのか?  健闘を祈る! 
でも、くれぐれも言っておくが、雷鳥にだけは絶対に手を出すなよ! あれは美味くねえぞ! いやすごく不味いぞ! あれは神の鳥だからな。そうだ、猿も神様の使いだったなあ…。
 



タカネヤハズハハコ 【 高嶺矢筈母子 】 (別名・タカネウスユキソウ)


富山県黒部市 2024年7月23日・撮影




アカモノ 【 赤物 】 (別名・イワハゼ)


富山県黒部市 2024年7月23日・撮影



旭岳 (南面) 岩塊斜面 ゴーロ 


富山県黒部市 南側 2024年7月23日・撮影

 珪長質凝灰岩(石英や長石の割合が多いため白っぽく見える。凝灰岩は火山灰が堆積してできた岩石だが、ふつう堆積岩に分類される。)


珪長質凝灰岩 旭岳付近


富山県黒部市 2024年7月23日・撮影

コケや地衣類が付着している。表面は風化もしている。
岩石は見た目にだまされてはいけない。割ってみないと本当の姿はわからない。



雪渓 残雪 何に見える?


富山県黒部市 清水谷 2024年7月23日・撮影


4日目 雨である。 白馬岳頂上宿舎テント場で、停滞。

5日目 雨である。 白馬岳頂上宿舎に逃げ込む、停滞。

6日目 ガスのち曇り。 白馬鑓ヶ岳登頂。天狗山荘泊。

7日目 ガスのち曇り。 白馬鑓温泉小屋泊。

8日目 白馬鑓温泉小屋〜猿倉へ、下山。

(つづく)

 
 


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