2023年 白馬岳夏山登山 1日目 栂池高原〜白馬大池山荘へ
ヤマハハコ 【
山母子 】

長野県北安曇郡小谷村 栂池高原 2023年8月23日・撮影
栂池からゴンドラリフトとロープウェイを乗り継いで、終点の自然園駅で降りる。そこはもう標高1829m。毎度のことだが、楽ちんである。
15分ほど道路を歩くと、昔駐車場があった所に、毎年このヤマハハコの花が咲いている。花とはいえないような地味な花だが、なぜか気になる花だ。
大きな山小屋というかロッジが2軒、そしてその奥に栂池自然園のビジターセンターが並んで建っているのだが、一番手前の栂池ヒュッテがやっていなかった。ビックリした。戸や窓に板が打ちつけられたままだった。
今年2023年は営業しないのだそうだ。後から聞いた話によれば、働く人がいなかったというか、集まらなかったらしい。遂にそういう時代が山の上にもやって来たということか。 |
栂池山荘 【 つがいけさんそう 】 こちらの旧村営は営業中だった。

小谷村 千国 2023年8月23日・撮影
ゴゼンタチバナの実 【 御前橘 】

小谷村 千国 2023年8月23日・撮影
天狗原 【 てんぐっぱら 】
石祠

小谷村 2023年8月23日・撮影
天狗原 池塘 【 ちとう 】

小谷村 千国 2023年8月23日・撮影
天狗原の湿原は、年々水分が少なくなって乾いてきているように見える。
オオシラビソの木も矮性化していたものが、なんとなく背が伸びてきたような気がする。
白馬乗鞍岳 (2469m)

小谷村 2023年8月23日・撮影
去年2022年にはなかった標識が新しく立っていた。ローマ字で「はくばのりくらだけ」と表記されている。「しろうま…」ではなかった。
登山道標識ナンバーというらしいが、それは「
MNAH 53-05」とある。
でも、知らない人にとってはなんだか全くわからない。
朝、下界は晴れていたのに、天狗原を過ぎたあたりから雨になり、あっという間に大雨というか、土砂降りになった。最近の雨は恐ろしい。
カッパのズボンをはくタイミングを逃してしまった。最初に逃すと、ずぶ濡れである。1日目からとんだことになった。
今夜はテント泊は無理かも知れないなと思いながら歩いた。白馬大池小屋に着いたころ、また雨がザアザア降りになってきたから、もう迷うこともなく、テント泊を小屋の素泊まりに替えてもらった。
小屋はすいていたので、変更は問題なくできたのだが、当日変更料とかいうプラスアルファーの料金を取られた。ずいぶん高い素泊まり料金になってしまった。だが、土間の食堂で、さっそく、500をプシュー! といけた。
乾燥室が使えて、部屋は結局個室状態になったので、ラッキーだった。布団で寝られるのはやはり楽だ。 |
*
2日目 白馬大池小屋〜白馬岳登頂〜白馬岳頂上宿舎テント場
白馬大池テント場 【 はくばおおいけ 】 (中央奥が船越ノ頭)

長野県北安曇郡小谷村
2023年8月24日朝・撮影
この写真の水たまりの位置はしっかり覚えておこう。
船越ノ頭 【 ふなこしのかしら 】 (2,612m)

小谷村
2023年8月24日・撮影
左は、杓子岳と白馬鑓ヶ岳が重なっている。
小蓮華山 【 これんげさん 】 2,766m (右) 船越ノ頭(2,612m)から

長野県北安曇郡小谷村
2023年8月24日・撮影
小蓮華山 【 これんげさん 】

小谷村
2023年8月24日・撮影
(小蓮華山頂上への最後の登り地点から撮影。登山道は右端へ行く。)
白馬岳 【 しろうまだけ 】 (中央) 2,932m

長野県北安曇郡小谷村
(白馬村) 2023年8月24日・撮影
(小蓮華山の手前、最後の登り地点から撮影。 上の写真とほぼ同じ場所から向きを変えて撮影した。
左の杓子岳とその後ろの白馬鑓ヶ岳がちょうど重なって、左上にかすかに白馬鑓ヶ岳の頂上が見える。)
小蓮華山 【 これんげさん 】 2,766m 頂上 (正面は白馬岳)

小谷村
2023年8月24日・撮影
稜線 (小蓮華山と三国境の中間)で岩石の色が変わる地点

新潟県糸魚川市
(小蓮華山と三国境の中間) 2023年8月24日・撮影
(左の褐色の岩石側が小蓮華山、右の白っぽい岩石側が三国境。
この辺に地質の境目というか断層があるとは聞いていたが、こんなにはっきりしているのは、なんか驚きというか、???である。
岩石とか地層って、よくわからねえ! タモリさん、よろしく!)
三国境 【 みくにさかい 】 正面が白馬岳方面

長野県北安曇郡 白馬村(新潟県糸魚川市、富山県朝日町)
2023年8月24日・撮影
ライチョウ 【 雷鳥 】

(まだ若鳥の感じがする。)
白馬岳 【 しろうまだけ 】 頂上 2,932m

長野県北安曇郡白馬村
2023年8月24日・撮影
雨ではなく霧だったので、しばらくボケーと休んでいたが、平日の木曜日のせいか、頂上では登山者に1人も会わなかった。
ウサギギク 【 兎菊 】

白馬村
2023年8月24日・撮影
稜線から左へトラバースする頂上宿舎への近道に咲いていた。この辺のお花畑は意外に花が多い。
でも、夏の高山の花は、もうほとんど終わりかけていた。
白馬岳稜線 白馬岳頂上宿舎(手前)とテント場、白馬山荘(上)

白馬村
2023年8月24日・撮影
丸山 【 まるやま 】 (2768m) 夕方の散歩

白馬村
2023年8月24日・撮影
天気が良くなって、展望がありそうなら、カメラを持って稜線に登り、10分ほどのこの丸山まで散歩するのがお約束のコースだ。
旭岳 【 あさひだけ 】 2,857m 夕日が沈む。

富山県黒部市 2023年8月24日・撮影
右側の旭岳の雪渓の小さいこと! こんなに小さいのは初めて見た。
*
3日目 清水岳ピストン
朝の雲海 稜線から東側の白馬村方面を見る。

長野県白馬村
2023年8月25日 5:38・撮影
白馬岳頂上宿舎 (右の黒い岩山は、離山2731m)

白馬村 (富山県黒部市)
2023年8月25日 7:44・撮影
杓子岳(左)
白馬鑓ヶ岳(中)
(旭岳付近登山道より)

黒部市
2023年8月25日・撮影
(右奥にかすかに見えるのは、槍ヶ岳、穂高岳)
旭岳 【 あさひだけ 】 登り口 2867m

富山県黒部市
2023年8月25日・撮影
「日本百名山」ならぬ、「日本百高山」というのがあるそうで、旭岳はその中の第39位に入っている。おかげで、近年登る人が増えているそうだ。
でも、オイラは登っていないし、登ろうとも思わない。一般登山道ではないから。ルートもはっきりしていないし、コワイのである。
登った人の話によれば、「別に…」と、どうってことなかったそうだが、下から見たら、“落石待ち”の大岩ばかりで、コワイ、コワイ…。
登山道は、一応ないのだが、上の写真の左側の尾根を登っていくほうがいくらか危なくないし、楽なのだそうだ。建て前は登山禁止の山である。まあ、建て前に従って登山する人は少ないだろうが…。 |
旭岳 【 あさひだけ 】 (2867m)
富山県黒部市
2023年8月25日・撮影
西側の富山県側から見た山容。こちら側から見れば、旭岳はやはり大きい。
裏旭岳 【 うらあさひだけ 】 (右) 2733m

富山県黒部市
2023年8月25日・撮影 (上と同じ地点から。正面奥が清水岳)
小旭岳 【 こあさひだけ 】 (左) 2636m

富山県黒部市
2023年8月25日・撮影 登山道は左を巻く。(右奥が清水岳)
オヤマリンドウ 【 御山竜胆 】

黒部市
小旭岳 2023年8月25日・撮影
ウメバチソウ 【 梅鉢草 】

黒部市
小旭岳 2023年8月25日・撮影
花の直径は3cmくらい。高山型のコウメバチソウかな? と思ったが、ふつうのウメバチソウだった。
タカネスミレ 【 高嶺菫 】

黒部市
清水平 2023年8月25日・撮影
高山の砂礫地に生える。葉には光沢があり、無毛。
似ている黄色のスミレのキバナノコマノツメは、亜高山から高山の湿った草原に生える。
タカネマツムシソウ 【 高嶺松虫草 】

黒部市
清水平 2023年8月25日・撮影
清水岳 【 しょうずだけ 】
(2603m)

黒部市
清水岳分岐点 2023年8月25日・撮影
(正面のハイマツの向こうが清水岳の頂上。展望はあるが、特に何もない。)
ウラジロナナカマドの実 【 裏白七竈 】

黒部市
2023年8月25日・撮影
ウラジロナナカマドの葉の裏は白っぽく粉をふいたような感じ。小葉の先はやや丸みがあり、縁に鋸歯はあるが先から中程までしかない。
実は上を向いて付き、先は閉じている。
タカネナナカマドの実 【 高嶺七竈 】

黒部市
2023年8月25日・撮影
タカネナナカマドは、ふつうウラジロナナカマドよりやや高山に生えるが、清水岳へ行く登山道近くでは、ほぼ同じ標高に生えていた。
タカネナナカマドの小葉の先は尖っている。鋸歯は先から縁の元のほうまである。
実は下を向いて付き、先には萼片が少し残っていて開いている。
*
4日目 白馬鑓ヶ岳ピストン
白馬岳 (丸山南側のお花畑より)

長野県北安曇郡白馬村
2023年8月26日・撮影
写真の中央左の白いガスの手前に、白馬岳頂上宿舎の建物(屋根)が写っている。ここは、丸山を越えた南東側の登山道である。
左側の草の生えているところは、ちょっとしたお花畑になっているのだが、夏の花はもうほとんどなかった。
下ばかり見て歩くせいか、石ころや岩石が目に付く。何という岩石だろうとは思うのだが、全然分からない。
でも、ここの岩の種類がすごく気になった。日の当たり方で黒っぽく写っているが、岩石自体は白っぽい石だった。(素人の当てずっぽうだが、珪長質凝灰岩ではないかと思う。赤っ恥覚悟で記しておく。) |
ミヤマトリカブト 【 深山鳥兜 】

北安曇郡白馬村
2023年8月26日・撮影
杓子岳 【 しゃくしだけ 】(左)
白馬鑓ヶ岳 【 しろうまやりがたけ 】 (右)

白馬村
2023年8月26日・撮影
左下が最低鞍部。
立山(左)
剣岳(右)
遠望

白馬村
2023年8月26日・撮影
白馬鑓ヶ岳 【 しろうまやりがたけ 】 右奥は剣岳
白馬岳 【 しろうまだけ 】 右は小蓮華山

北安曇郡白馬村
2023年8月26日・撮影
杓子岳 【 しゃくしだけ 】 (2812m)を振り返りる

白馬村
2023年8月26日・撮影
白馬鑓ヶ岳 頂上 (2093m)

北安曇郡白馬村
2023年8月26日・撮影
杓子岳 【 しゃくしだけ 】 頂上 西面

北安曇郡白馬村
2023年8月26日・撮影
行きは巻き道のトラバース道を通り、帰りに稜線を歩いて頂上に登った。
入道雲がもくもく出てきたが、雷には会わないですんだ。
杓子岳周辺は、デイサイトという岩石でできているそうで、この西面は岩石が風化で割れた岩屑が斜面一面に広がっている。一方、東面はデイサイトの裸岩壁だが、風化と崩壊がメッチャ進んでいる。下は杓子沢である。
デイサイト(適切な日本語名がないらしい)は、流紋岩と安山岩の中間の火山岩だそうだ。日に焼けると赤茶色になるが、岩石自体は白っぽい灰色をしている。削ってみたら、確かにグレーで、鉱物の粒々は肉眼では見られなかった。 |
ヤマハハコ 【
山母子 】 東面

白馬村
2023年8月26日・撮影
杓子岳頂上付近の東側の急なガレ場。こんな所にもこの気になる花が咲いていた。
トウヤクリンドウ 【 当薬竜胆 】

北安曇郡白馬村
2023年8月26日・撮影
この花だけはあちこちにいっぱい咲いていた。
タカネイブキボウフウ 【 高嶺伊吹防風 】

北安曇郡白馬村
2023年8月26日・撮影
杓子岳から白馬鑓ヶ岳への中間地点で、急な登りになる尾根筋に標識の木の柱が立っている所がある。いつもここで休むのだが、ここには白っぽい石灰岩が多く見られ、なぜか見事な株のタカネイブキボウフウがたくさん生えている。高山では、もう秋の気配が漂っているというのに、立派な花を咲かせていた。
セリ科の植物は、石灰岩地帯が好きなのだろうか。名前にあるイブキとは伊吹山のことだろうし、伊吹山は主に石灰岩でできているという。植生と岩石や地質との関係は、面白そうだが、オイラには無理だな…。 |
白馬岳頂上宿舎テント場

北安曇郡白馬村 (丸山付近から)
2023年8月26日・撮影
この中にオイラのテントが1つある。今日で3泊目で、テントは張りっぱなしの連泊である。これが一番楽だ。
それより、ここの稜線の地形はなんとなく変わっているなあ。稜線なのに窪地があり、その斜面はやけに平だ。一方、右側にはゴツゴツした岩山(名称は離山)がむき出しになっている。この岩石の種類も気になるところだが、こういう地形はどのようにしてできたのだろう…。
まあ、オイラに分かるわけはないが…。二重山稜?(それにしては短い) 火山の噴火によるカルデラ?(それにしては小さい) それとも氷河の爪痕?(それにしては曲がりくねっている) いや、そんなことより、そもそも、この山、白馬岳、いや北アルプスはどうやってできたんだ…?
そんな高尚な話は1ミリも出なかったが、実は、この後、頂上宿舎の食堂で、プチ宴会になってしまったのである。たまたま杓子岳でいっしょになった2人連れのカップル(自称夫婦)と、なんとなく意気投合!山談義に花を咲かせてしまった。愉快な人たちだった。
山小屋の食堂の人に、「そろそろラストオーダーなんですが…」と言われるまで、しっかり飲んでしまったのである。
というのも、突然“大事件”が勃発したからである。
「明日の午後3時から、白馬大雪渓は通行止め!」 になったからである。 えっ? そんな!
まあ、なんとなく情報は流れてきていて、知ってはいたが、正式に決まったということのようだった。
明日の午後3時までに、白馬大雪渓を下るしかない。 |
*
5日目 白馬大雪渓を下山、猿倉へ
白馬岳頂上宿舎と
食堂 【 はくばだけ ちょうじょうしゅくしゃ 】

北安曇郡白馬村
2023年8月27日・撮影
♪山よさよなら また来る日まで…
♪
杓子岳(左)
白馬鑓ヶ岳(右)

北安曇郡白馬村
白馬岳頂上宿舎直下 2023年8月27日・撮影
羊背岩 【 ようはいがん 】
(ルントヘッカー)

白馬村 葱平
2023年8月27日・撮影
羊背岩とは、氷河の移動による侵食で削られながらも、硬い部分が丸くこんもりと残った大岩のこと。
氷河の爪痕が擦痕になって残っているそうだ。この岩は、通称「赤岩」と言うそうだが、岩石の種類はネットで調べてみたが、分からなかった。どこにも書いてない。なぜだろう。何という種類か気になるなあ。 |
杓子岳 北カール 【 山岳永久凍土 岩石氷河 】
北面

白馬村 葱平
2023年8月27日・撮影
杓子岳北カールに、岩石氷河があり、山岳永久凍土の存在することが、今年2023年の学会で発表された。
杓子岳 天狗菱 【 てんぐびし 】
北面

白馬村 葱平
2023年8月27日・撮影 北面の下が大雪渓。崖は落石の供給源になっている。
岩室付近の橋

2023年8月27日・撮影
白馬大雪渓 雪渓上を歩く始まりの地点、例年よりかなり下になっている。

2023年8月27日・撮影
クレバスは崩れ、雪渓の雪は溶け、登山道はぐちゃぐちゃ。
ピンクテープのロープが張ってあり、常駐隊の人にそこから雪渓には入らないように言われた。
「また来年も来てくださいね」とも言われてしまった。
雪渓上は、下りで小1時間ほどしか歩かなかった。
白馬大雪渓
・
2023年2023年8月27日・撮影
大雪渓から離れて、右岸のザレ場の秋道をトラバースするように下る。歩きにくくて、危ない所もある。
シュルント (雪渓と岩との隙間)
大雪渓 下部 (雪渓が崩壊して終わっている地点))
旧白馬尻小屋前の沢

白馬村 白馬尻小屋(休業)前
2023年2023年8月27日・撮影
雪渓はまったくなかった。今年は異常なまでの猛暑だったからなあ…。
猿倉登山道入口
「白馬大雪渓ルート通行止め」の看板

白馬村猿倉 2023年2023年8月27日・12:20撮影
白馬大雪渓が8月中に通行止めになるのは、近年ではめずらしいのでは…?
でも、とにかく無事下山。 |
(2023.12.31記) |
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