| 2020年 四国八十八ヶ所遍路 その11 2021年３月 日更新 (つづき） ＊ 22日目 翌朝、女将さんは朝食のトーストと温かいコーヒー、卵焼きやサラダなどを出してくれた。私はありがたくいただき、話をしながらいっしょに食べた。そして、女将さんは車で高岡まで送るのがもう当然のことのように準備していた。高知から高岡は15km以上はある。 女将さんは、「私がこれから高岡まで行くんですから、高岡へ行くあなたが乗っていくのは当たり前でしょ。」とはっきり言った。まあ、断る理由はなかったから、遠慮なく乗せてもらい、送ってもらうことにした。 階段のところに、ジェットボイルのコンロが置いてあるのが目に入った。ガスが満タンに入っているので家に送れなかったジェットボイルのボンベを私は１つ持ったままになっていた。それをお礼に差し上げた。 「小さいのにこれは高いのよね。ありがとう。」と、受け取ってくれた。すべてがすっきりしていた。 女将さんは仕事に行くと言っていたが、高岡に花屋の店を持っているようだった。 高岡の町の中に入り、見覚えのある道標のある遍路道に着いたので、私はそこで降ろしてもらった。私はお礼を何度も言った。時刻は9時43分だった。時間的にずいぶん早くなった。助かった。 私はなぜか、いつも、誰にでも、何をしても、助けられる。と、思っている。まあ、ほとんどはおばさんにだが…。 歩き遍路は再び始まった。 高岡の町の中を南に進む。だが、車から降りたばかりの私には、現在地と方向がどうもよくわからなかった。自信がなかった。スマホの地図はまだうまく使えない。人に聞いた方がはやい。自転車から降りた女の人がいたので、確かめるつもりで道を尋ねた。親切に教えてくれた。遍路道と方向は合っていた。 でも、しばらく歩いてから、また道が不安になった。住宅の庭に人がいたので、これ幸いと道を尋ねた。振り返った女の人は、あっ！ 先ほどの道を教えてくれた同じ女の人だった。偶然の一致である。私は驚いたが、女の人は驚きもしないで、またさっきの、あのおじいさんだという顔をしているようにも見えた。また聞かれるだろうと、何気に庭に出て待っててくれたのかもしれない。（ここまでいけば、もう“勝手な解釈”と言うより“妄想”ですね。） 塚地峠 （塚地遍路道）  高知県土佐市 2020年10月15日・撮影 塚地遍路道 （宇佐漁港と竜岬の展望）  高知県土佐市 2020年10月15日・撮影 遍路道の県道39号線は、波介川（はげがわ）を渡り、塚地峠へ向かう。水車のある塚地休憩所からは塚地遍路道を通り、山道の峠越えをする。県道をそのまま進めば、塚地トンネル(837．5m）がある。だが、ここは100mくらいの標高差なので遍路道の峠越えをする。宇佐湾や横浪半島の展望もある。 海岸線の宇佐に出て、宇佐大橋を渡れば、36番札所の青龍寺（しょうりゅうじ。せいりゅうじではない）は、もう遠くはない。行ける。青龍寺までは４kmほどで、行ける。龍温泉・三陽荘の前で迷った。さらに我が憧れの民宿まで今日中に行けるだろうかと。青龍寺から横浪半島の横浪黒潮ライン(県道47号線）をさらに８kmほど歩かねばならない。午後１時を過ぎていた。宿泊を申し込む限界の時間だ。 私は、思い切って電話した。「みっちゃん民宿」に…。胸が少しどきどきした。 電話はすぐに出た。思いの外若々しい明るい声で、「いいですよ。どうぞ！」と応えてくれた。 遂に、憧れのみっちゃん民宿に泊まるのだ。でも、歩くのが遅いから、着くのは夕方になるかもしれませんが、必ず行きますから、よろしくと、私はお願いした。 多くの歩き遍路の心は、青龍寺あたりで何度となく行き惑うだろう。ルートが２つ、正確には３つあるからだ。 １つは宇佐に戻って浦ノ内湾岸を行くルート。このコースが平坦で一般的には選ばれている。 ２つ目は横浪半島の尾根筋を行くルートである。横浪スカイラインなどとも呼ばれているが、曲がりくねっていてアップダウンも激しく、店や宿は極端に少ない。みっちゃん民宿はこのルートにあり、さらに海岸まで100m弱は下る池の浦という漁村にある。 ３つ目は、市営巡航船で埋立から横浪まで浦ノ内湾を行く海上ルートである。空海が実際にたどった昔からの遍路道は、この海上にあるという人もいる。 渡し場の跡 宇佐大橋 （右が青龍寺のある竜岬）  高知県土佐市 2020年10月15日・撮影 36番札所 青龍寺（しょうりゅうじ） 納経所(左）  高知県土佐市宇佐町竜 2020年10月15日・撮影 青龍寺 仁王門  高知県土佐市宇佐町竜 2020年10月15日・撮影 瀧行の滝  土佐市宇佐町竜 2020年10月15日・撮影 青龍寺 三重塔  土佐市宇佐町竜 2020年10月15日・撮影 青龍寺 石段 土佐市宇佐町竜 2020年10月15日・撮影 36番札所 青龍寺（しょうりゅうじ） 本堂 （左は大師堂）  土佐市宇佐町竜 2020年10月15日・撮影 青龍寺 奥の院  土佐市宇佐町竜 2020年10月15日・撮影 （つづく） |